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GAA量産で inner spacer と contact resistance が制約になる理由

一言でいうと、GAAの難しさはゲートで包むことより、inner spacer から source/drain contact までの access region を量産でそろえること です。

2026-04-23時点。
imec の nanosheet 解説 では、nanosheet では inner spacer が gate と source/drain を絶縁して寄生容量を下げる追加誘電体であり、しかも nanosheet フローの中で最も複雑な工程モジュールの一つだと整理されています。
一方で imec の contact resistance 解説 は、微細化で source/drain contact resistance が支配的な寄生成分になりやすく、先端ノードでは ultralow contact resistivity が必要だと説明しています。
GAA では、短チャネル制御を改善すること電流を低損失で出し入れすること を別々に扱うと、量産制約の所在を取り違えます。

工程モジュール先に確認する物理量量産で先に出やすい不具合主に悪化する電気特性
inner spacer gapfilllateral recess 長、seam の有無、etch selectivity漏れ経路、寄生容量ばらつきparasitic capacitance、off-state leakage
S/D cavity と epitaxysidewall angle、bottom shape、void の有無epi 欠陥、contact landing 面積不足drive current、series resistance
nanosheet 表面処理roughness、残渣、界面欠陥mobility 低下、ばらつき増加electron mobility、Vt variability
contact metalcontact resistivity、selectivity、landing area接触抵抗上昇、局所発熱contact resistance、path delay

この表で分かる通り、GAA の量産判断は gate を作れるか だけでなく、access region をどこまで低抵抗かつ低ばらつきで構成できるか で決まります。

なぜ inner spacer が gate-to-S/D 分離を決めるのか

Section titled “なぜ inner spacer が gate-to-S/D 分離を決めるのか”

imec の解説 が示すように、inner spacer は Si/SiGe 積層の外側を lateral etch で recess して小さな空間を作り、そこへ誘電体を埋めて形成します。
ここでの役割は単なる絶縁ではなく、少なくとも次の 3 つがあります。

  1. gate と source/drain の距離を決める
    近すぎると parasitic capacitance が増え、遠すぎると series resistance と footprint が苦しくなる。
  2. source/drain epitaxy のための空間を作る
    後段の cavity 形状や epi 量が崩れると、drive current とばらつきに跳ね返る。
  3. 後工程の contact module の出発条件を決める
    ここで seam やリーク経路を作ると、contact metal を改善しても接続抵抗と漏れ電流の両方が残ります。

ここから先は複数ソースを踏まえた整理ですが、GAA の access region は inner spacer -> S/D cavity -> epitaxy -> silicide / contact metal -> local interconnect という連鎖で整理した方が実務に近いです。
どこか 1 か所だけを改善しても、次のモジュールが律速ならトランジスタ性能は回路性能まで届きません。

何が難しいか量産での意味
inner spacer gapfill狭い空間で clogging や seam が出る漏れ、ばらつき、後工程マージン悪化
S/D cavity etch側壁、底形状、深さ均一性をそろえる必要があるepitaxy 品質と nanosheet-to-epi contact が崩れる
nanosheet 表面roughness や contamination が mobility を削るGAA の electrostatics 改善を性能に変換できない
contact metal接点面積が小さく W では抵抗が苦しくなるtransistor と配線網の接続がボトルネック化

この表の各行は、今ではすべて公開一次情報の中で独立した注力テーマになっています。

Tokyo Electron の IR Day 2025 資料 では、Episode 1: Inner Spacer Formation - Lateral Gapfill として、45nm 未満のギャップで conformal thin film deposition による clogging と lateral gap の seam を課題に挙げています。
TEL はこれに対して、sidewall 側を薄く付けることと seamless lateral gapfill を解として示しており、inner spacer が単なる材料選択ではなく 埋め方そのものが量産課題 であることが分かります。

Applied Materials の Sym3 Z Magnum ページ は、GAA の S/D cavity では vertical sidewalls、uniform dimensions、rectangular bottoms が必要で、それが void-free epitaxy と nanosheet-to-epi contact の最大化に直結すると説明しています。
これは、エッチはただ削る工程 ではなく、後段の接触抵抗と drive current を決める幾何制御 だという意味です。

Applied Materials の 2026 年発表 では、Viva による pure radical treatment で GAA nanosheet 表面を atomic-level precision で平滑化し、electron mobility を押し上げると説明しています。
GAA ではチャネルを細く積層しているため、表面ダメージや roughness がそのまま性能損失に変わりやすい。
inner spacer と cavity が幾何の問題 なら、こちらは 材料界面の問題 です。

同じ Applied の発表 は、2nm-class GAA の量産立ち上がりに合わせて、W transistor contacts を Mo へ置き換える Spectral ALD を打ち出し、critical contact resistance を現行 selective W benchmark 比で最大 15% 低減できるとしています。
ここでは、Mo が BEOL の遠い将来材料 ではなく、トランジスタと銅配線網の間の最小接続 を下げる front-end 側のテーマとして扱われていることです。

contact resistance が drive current と path delay を制約しやすい理由

Section titled “contact resistance が drive current と path delay を制約しやすい理由”

imec の 2019 年解説 は、14nm 世代以降で source/drain contact resistance が major performance killer になり、将来ノードでは 2x10^-9 Ωcm² を下回る ultralow contact resistivity が必要だと述べています。
さらに imec の 2017 年プレスリリース でも、contact area が小さくなるほど接触抵抗が支配的な寄生要因になりやすいことが強調されています。

ここでの本質は単純です。
GAA が electrostatics を改善しても、電流の出入り口が細く高抵抗なら、その改善分は series resistance と path delay の増加で相殺されます。 だから GAA = gate の話 だけでなく、GAA = contact engineering の話 でもあります。

各社はどの工程モジュールを改善しているか

Section titled “各社はどの工程モジュールを改善しているか”

会社別に整理すると、どの工程モジュールを改善対象にしているかが分かります。

  • TEL: inner spacer lateral gapfill と contact formation を、GAA / BSPDN 時代の成長テーマとして整理している
  • Applied Materials: nanosheet surface、S/D cavity、Mo contact を一気通貫で整理し、GAA transistor を成立させるプロセス群 として提示している
  • Intel 18A: RibbonFET と PowerVia をセットで前面に出しており、デバイス構造と電源・配線の同時最適化が量産テーマになっていることを示している

この 3 社の整理を合わせると、inner spacer / cavity / contact / power delivery は別々の話ではなく、angstrom era の access resistance 問題を工程別に分けたものとして整理できます。

GAA の速度は access region まで含めて決まる

Section titled “GAA の速度は access region まで含めて決まる”

速度を上げる余地は増えますが、それは チャネル制御が改善する という初期段階にすぎません。
実際の速度は、inner spacer、epi、contact、配線抵抗まで含めて決まります。

Backside Power Delivery は IR drop や配線混雑の改善には寄与しますが、トランジスタ直近の S/D contact が高抵抗のままなら access bottleneck は残ります。
むしろ GAA + backside power の時代ほど、局所接続 の品質が目立ちます。

Mo contact を量産へ広げるには、成膜 selectivity、界面品質、前処理、CMP、欠陥、量産均一性をまとめて再設計する必要があります。
工程別の確認項目は Mo contact と selective deposition の量産条件 に分け、従来 Wselective Wselective Mo の差を工程ごとに並べています。
BEOLメタライゼーション:Cu・Wの限界とMo/Ruの位置づけ と並べると、front-end contact と BEOL metallization の分担を工程境界ごとに切り分けられます。

GAA の改善テーマを工程順で確認するなら、次の順が使いやすいです。

  1. inner spacer gapfill で seam と leakage を抑えられているか
  2. S/D cavity profile が epi 成長と contact landing を両立できる形になっているか
  3. surface treatment で nanosheet mobility を落としていないか
  4. contact metal / silicide が access resistance を押し上げていないか
  5. その結果を DTCOBackside Power Delivery の配線・電源設計へどう反映するか

この順序で確認すると、GAA を gate 断面だけで説明するのではなく、量産判断に必要な工程分解として扱えます。